以前の職場の人から携帯に電話があった。
何かしらの緊急事態の場合は携帯に、若干余裕がある案件は電子メールで連絡、
という取り決めにしておいたのである。
したがって今日の連絡は緊急事態のはずなのだ。
「緊急、緊急!」
とはいえ、今までの経験からきっとロクな用事ではないのだ。
そもそも職場を離れて略五ヶ月経つ人間に聞かなければならないことなどあるものか。
前の職場の仕事内容なんて、優先度から言えば、日々ぐんぐん下がっていくものですよ...。
ぶつぶつと愚痴を溢していると、着信履歴がすくすくと順調に成長していく。
電話に出るのも億劫だが、履歴氏の竹のような急激な成長をぼんやり
観察している訳にもいくまい。
「面倒だが仕方がない!」
しかしながら、若干電話が取りにくい状況だったので、
取り急ぎメールで連絡を取ることとした。
「なんでしょう?」
「xxxはどこにある?」
予想通りである。
「それはですね、倉庫の右端の棚の一番下にあると思います。
ですが、辞めて略5ヶ月も経つと記憶が薄れていくのです。
毎日見ていれば違うのでしょうが。」
「そこまで言うのならば見に来てくれ給え。」
そんな訳で、馴染みの倉庫に向かったのである。
いい加減忘れたいものだが。この暑さで蒸している。
「相変わらず暑苦しいですなぁ。」
記憶通り、それは右端の棚の一番下にあった。
正確に言えばそこには箱があった。この中にxxxがあるはずだ。
箱を空けてみるとふわふわとした緩衝材がみちっ、と詰まっている。
箱の中をよく調べている内に、指先に激痛が走った。
慌てて手を引っ込めて中をのぞき込むと細い針のようなものが見える。
それは毒矢だった。
「あぁ、そうだった」
これまでに何度もこの倉庫を訪ねて、こうして箱を開き、調べているうちに
毒矢で刺されたのだ、と―。

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